聖書から「決して気を緩めずに」

「あなたが来るとき、トロアスでカルポのところに置いてきた外套を持って来てください。また書物、特に羊皮紙の物を持って来てください。」テモテへの手紙第二4章13節

 テモテへの手紙第二は、パウロの晩年に、しかもローマの獄中から書かれたものです。彼は伝道者として長い間戦い続け、老年に達し、不自由な獄中生活を余儀なくされていました。「私はすでに注ぎのささげ物となっています。私が世を去る時が来ました。」と殉教することを覚悟しなければならない状況に置かれていました。テモテへのこの手紙のすばらしさは、年を重ねたベテランのクリスチャンの歩みを垣間見ることができることです。年を重ねることのすばらしさは、人生の季節ごとに新しい発見があり、それまで気づかなかったことや、体験できなかったことなどを味わい、教えられることです。この経験は人生の本当の豊かさや深みを私たちに教えてくれます。

 さて、パウロは愛弟子のテモテへ「何とかして、早く私のところに来てください。」と懇願し、さらに、「トロアスでカルポのところに残しておいた上着を持ってきてください。また書物を、特に羊皮紙の物を持って来てください。」と頼みました。なぜ上着なのか、書物や羊皮紙なのかと不思議に思いますが、ここにパウロのイエス様への奉仕の姿勢がよく表されていると思います。それは息を引き取る最後まで主のために生き続けるという堅い決心があったからです。上着は彼自身の身だしなみへの気遣いを表しているのでしょう。また書物と羊皮紙は最後まで学び続ける姿勢と、諸教会のために手紙を書くことを通して教えと励ましを与えるためだったのでしょう。パウロがこのとき書いた獄中からの手紙は新約聖書に収められ、今もなお教会が健全に成長するために重要な教えを提供しています。

 私たちもパウロに見習いながら、地上での最後のひと息まで、決して気を緩めず、主の働きに精一杯尽くして行きたいものです。(牧師 笠川徹三)