聖書から「一番クリスチャンに遠かった人が」

「私は以前には、神を冒瀆する者、迫害する者、暴力をふるう者でした。しかし、信じていないときに知らないでしたことだったので、あわれみを受けました。」テモテへの手紙第一1章13節

 二千年以上前の初代教会において最も活躍したパウロは、かつて教会を迫害した、危険極まりない人物でした。そのパウロがダマスコ途上における回心の出来事を通してクリスチャンになり、その後、ローマ帝国内を駆け巡り、数多くの教会を生み出す働きをしました。今日世界中に数えきれないほどのクリスチャンがいます。私もそのひとりですが、初代教会のパウロの働きの影響を受けているのです。また彼が書いた13の手紙が新約聖書に収められていますが、それらの手紙によってキリスト教会が大きな影響を受けてきただけでなく、現代に至る二千年の人間の歴史にも大きな影響を与えてきました。

 冒頭の聖書箇所はパウロ自身が弟子のテモテに書いた手紙の一節です。彼は自ら迫害者であり、危険な人物であったと言っています。教会の最初の殉教者、ステパノは石打ちで殺されましたが、そこに、パウロも居合わせ、殺害に加担しました。パウロはさらにダマスコの町に赴き、クリスチャンたちを捕らえ、投獄しようとしました。パウロがダマスコに近づいたとき、突然光に打たれるように照らされ、その中から声が聞こえました。「サウロ、サウロ、なぜ私を迫害するのか。」この時、パウロはイエス様と出会い、回心し、悔い改めてイエス様を信じる者になりました。迫害者からキリストの伝道者に劇的に転換するきっかけになりました。パウロの救いは私たちにとって大きな励ましです。パウロほどクリスチャンになることから遠かった人はいないからです。その大反対者であったパウロが大伝道者になった神様の不思議な働きは私たちを勇気づけます。今私たちに反対し、批判し、攻撃する人はむしろクリスチャンになる可能性があるからです。無関心な人より反対する人のほうが神様に近い人と言えるのではないでしょうか。(牧師 笠川徹三)