聖書から「親を敬うこと」(1)

「 あなたの父と母を敬え。あなたの神、主が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである。」出エジプト記20章12節                                     

 十戒は前半の4つを神様と人間の関係について教え、後半の6つを人間同志の関係について教えています。言い換えるならば、前半は神様を愛すること、後半は隣人を愛することを教えています。後半の人間関係の戒めにおいて、一番最初に親を敬うことを命じていることは、いかにこの命令が人間関係において基本であることかが分かります。

 まず、この命令が神様のご配慮であることを覚えましょう。親を敬うことは勧めでなく、命令です。理屈なく従うことです。そうするとき私たちは人生に苦しみを少なくし、より自由になれるのです。なぜこの命令が与えられているのでしょうか。その大きな理由は親はみなが不完全だからです。親であっても間違いをし、失敗をします。もし尊敬できる親だけを敬うとしたら、敬われる親は何人いるでしょうか。また子どもたちは親に従うことを通して、家庭で権威に従うことを学ぶのです。その後の学校生活、社会生活において権威を重んじることを学んでいない子どもたちは困難に直面します。

 次に、どのように親を敬うかについて考えてみましょう。それは2つあります。第一に受け入れること、第二に感謝することです。受け入れるとは親であっても間違いをし、失敗をすることを認め、受け入れることです。受け入れることには赦すことを含んでいます。親は弱さのゆえに愛している大切な子どもを傷つけてしまうことがあります。親も弱い人間であることを理解し、赦すことです。感謝することはもっと難しいことです。しかし親が勇気をもって生んでくれたからこそ、この世界に生きることができていることを覚えるべきです。また子どもを育てることがどれほど犠牲を伴うことであるかを理解すべきです。子どもたちが大きく成長したとき、親たちはみな白髪としわを持つようになるのです。たとい親を敬うことが難しい場合であっても、あえて親を敬うべきなのです。(牧師 笠川徹三)